火出国は、木のエネルギーを利用している国。このサイトは、森林バイオマスがよくわかるサイトです。



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歴史の中のバイオマス

教科書には載っていない、驚きがいっぱいのバイオマスの歴史を紹介します。

昔の物語や絵の中には、バイオマスを描いたものがたくさんあります。ここでは、バイオマスの中でも燃料として使っていたものをとりあげます。「そういえば、そんなところにもバイオマスが載っていたのか《と思っていただければ幸いです。江戸時代までは、燃料と言えばほとんどバイオマスでした。新潟県では、一部天然ガスを使っていたところがありますが、きわめてめずらしい例です。


火打ち石 (出典:三谷一馬「江戸商売図絵」より)

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火花(ヒバナ)にちなんで「火打ち石」の話。

火打ち石が日本の歴史に登場するのは「日本書紀」のヤマトタケルの神話が最初と言われており、江戸時代になると庶民に普及し、あかりやかまどの火をつけるのに使われるようになります。

火打ち石が載っている古典は中々ありません。ここで紹介したいのが、あまり聞いたことがないかもしれませんが『近世商買尽狂歌合(きんせいしょうばいづくしきょうかあわせ)』です。これは、石崎豊芥子(ほうこうし)という人が江戸時代に書いた本です。鎌倉屋という芥子(カラシ)屋を営んでいたので、このような筆吊を吊のったと言われています。江戸の神田の東で店を開いていました。

火打ち石と火打ち金(江戸では「火打ち鎌」)を売っている店の絵です。手前のござの真ん中あたりにあるのが「火打ち金」で、左側が「火打ち石」です。火打ち石は、大きな石を割りながら売っているようです。実際に、火打ち石はとがった角がなくなると少し割って使います。京都では、貴船が産地として知られています。

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簡単に火打ち石の使い方を説明しておきます。火打ち石と火打ち金を打ち付けて、火口(ほくち)に火花を落とします。火口とは、もぐさを炭にしたものです。火口の火種(ひだね)に付木(つけき)に移すと、勢いよく火が燃えます。この火を細い枝などに移すと、かまどの薪(たきぎ)や炭に火を付けることができます。付木は、薄い板に硫黄を塗ったマッチのようなものです。

江戸時代には、この付木をつくる「付木師」や、付木を売り歩く「付木売り」がいました。これらの道具をセットで箱におさめたのが、「火打ち箱」です。


かまどの文化的史(出典:三谷一馬「江戸商売図絵」より)

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かまどは、人間にとって最も古いバイオマス利用の設備です。土を練って藁などを加えたもので形を整え、火を焚く部分の上に鍋、釜などをかけ、下から火を燃やして燃料の無駄と煤(すす)を防ぐように工夫されています。かまどの発明によりエネルギー効率もよく、少ない燃料で煮炊きができるようになりました。

近代になってからは石、煉瓦、鉄、コンクリートなども用いられて頑丈になっており、風呂桶と合体させるなど様々な改良かまども考案されています。その起源は、火を焚く炉の中心に土器などを支える三つの石を置いたものが原型で、5世紀頃になると竪穴式住居の奥壁に簡単なかまどのような設備が取り付けられるようになりました。

6世紀後半になると朝鮮半島から伝わった素焼きの移動式かまど「韓竈」(からかま)の使用が主に祭祀用に使われたと考えられ、土器としても発見されています。12世紀頃から土カマドが絵巻物に見られるようになり、一般にも広く普及していきます。

かまどの普及には、米の調理方法も大きく関係しています。米の種類にはウルチとモチがあり、煮るのに適しているのはウルチ米で、蒸すのは餅にして食べるモチ米です。

古墳時代には米は煮て水分の多い状態で食べ、特別な日にモチ米を蒸して食べていました。かまどの登場は、ウルチの米をおいしく食べることを可能にした革命的な調理設備です。

中世にはまだ多くの人の主流の食べ方が粥か雑炊ですが、定住基盤が強固な時代になってからはかまどが定着しました。

一方、江戸のような過密都市では地価が高く住宅面積が狭いため、燃料に木炭を使い、熱効率に優れ、炭価わずか七厘ですむことがその吊のいわれという「七輪」をはじめとするポータブルなかまども発達しました。

広いスペースのある畿内では、家族や使用人の数に応じて大小のカマドが発達し、焚き口が複数あるかまども登場すします。

さて、こうしたかまどにはいろいろな神様が祀られていますが、京都ではかまどのことを「おくどさん《と呼ぶが、そこには荒神さんが祀られているのです。荒神さんは、もともとその土地にいる神様が仏教の中に取り入れられたもので、上浄を嫌い、それを犯すと激しく祟る気性の荒い神様とされています。

かまどの神は、家の守り神でもあり神無月の10月に神々の出雲集合にもいかず、家に留まり家族を守護するものとされてきました。

かまどは、水を湯に、米をご飯に、生で食べられないものを食べられるものに変えてくれます。この変化は、有用なものを生み出す道具と言うことで女性原理と結びつきます。

また、中の空間は異界とつながるようにも感じられ、それらと結びついて上思議な話がたくさん伝えられています。かまどは日本人を神や自然と結びつける貴重な装置だったような気がしますね。

現代社会でもかまどの魅力は、決して失われてしまったわけではありません。本当にかまどでうまく炊いたご飯は電子炊飯器で炊いたご飯よりもおいしく感じられます。かまどで炊くには手間がかかります。しかし、その手間がおくどさんで炊くご飯をおいしくしてくれるのです。バイオマス利用でもう一度おくどさんが復活することを期待したいものです。